前回、生地の重さを表す単位についての記事『オンスとは?』をアップしましたが、今回は生地になる前の『糸』について説明します。
繊維 - Fiber
糸の説明をする前に、まずは糸になる前の『繊維』について簡単に説明します。繊維は、繊維の長さが短い『短繊維』と繊維の長さが長い『長繊維』の2つに分けられます。
短繊維の代表的な原料は『ウール (毛)』『綿』『麻』などの天然繊維となり、長繊維の代表的な原料は『ナイロン』『ポリエステル』『レーヨン』などの合成繊維に加え、唯一天然繊維の『シルク』があります。
そして、短繊維を撚り合わせて作った糸を『スパン糸』、長繊維を撚り合わせて作った糸を『フィラメント糸』とそれぞれ呼びます。
繊維名 | 原料 | 糸の種類 |
短繊維 | ウール 綿 麻 |
スパン糸 |
長繊維 | ナイロン ポリエステル シルク |
フィラメント糸 |
スパン糸の特長は、短繊維を撚り合わせて作っているため、糸の体積が大きくなり、生地に嵩高感 (膨らみ) が増します。さらにスパン糸は空気をたくさん含んでいるため、保温性にも優れています。対してフィラメント糸の特長は、長い繊維を何本も重ねているため、滑らかで光沢があります。
糸の種類 | 特長 |
スパン糸 | 嵩高感が増し保温性がある |
フィラメント糸 | 滑らかで光沢がある |
それでは、上記を踏まえて『糸の単位』について話をしていきます。
糸番手とデニール
まずはじめに、今回タイトルにもなっている『糸番手』という糸の太さを表す単位は、上記で説明したウール、綿、麻などのスパン糸のみの単位となります。それに対してシルク、ナイロン、ポリエステルなどのフィラメント糸の単位は『デニール』と呼びます。デニールに関しては、ストッキングやCORDURA® (コーデュラ®) などの機能素材の単位として聞いたことがあると思います。
ややこしいですね...
そう、本当にややこしいのです。で、実はややこしいから全ての糸の単位を共通化しようと『テックス (tex)』と『デシテックス (dtex)』という単位が作られたのですが、長年親しんできた『番手』や『デニール』が良いのか?テックスとデシテックスは全く浸透しませんでした笑。15年以上ファッション業界に携わっている私ですらテックスとデシテックスは使ったことがありません。
さらに...
そして、さらにややこしいのが、スパン糸の太さを表す『糸番手』ですが、糸番手には『毛番手』『綿番手』『麻番手』の3種類があり、それぞれ求め方が異なり同じ番手でも太さが異なるのです。
毛番手
1kgの重さで、1kmの長さを『1番手』とする。すなわち、1kgの重さで2kmの長さの場合は『2番手』、3kmの長さの場合は『3番手』となる。
綿番手
1ポンド (約435g) の重さで、840ヤード (約768m) の長さを『1番手』とする。すなわち、1ポンドの重さで1680ヤードの長さの場合は『2番手』、2520ヤードの長さの場合は『3番手』となる。
麻番手
1ポンド (約435g) の重さで、300ヤード (約274m) の長さを『1番手』とする。すなわち、1ポンドの重さで600ヤードの長さの場合は『2番手』、900ヤードの長さの場合は『3番手』となる。
上記のように『番手』は、一定の重さに対して、どれだけの長さになるかで求めます。この方式を『恒重式』と呼びます。つまり、恒重式の糸は【数字が大きいほど糸が細い】ということになります。
対してフィラメント糸の太さを表す『デニール』は、考え方が逆になります。
デニール
9000mの長さで、1gの重さを『1デニール』とする。すなわち、9000mの長さで10gの重さの場合は『10デニール』、100gの重さの場合は『100デニール』となる。
上記のように『デニール』は、一定の長さに対して、どれだけの重さになるかで求めます。この方式を『恒長式』と呼びます。つまり、恒長式の糸は【数字が大きいほど糸が太い】ということになります。
番手やデニールを求める方式を見て分かるように、正確には番手やデニールは糸の太さではなくオンスと同じように『重さ』を表しています。ただ、番手やデニールに関しては『太さ』と覚えておいて大丈夫です。
糸の種類 | 糸の太さを表す単位 |
スパン糸 | 番手 |
フィラメント糸 | デニール |
色々ややこしい話をしましたが、上の表と下の特長をふわっと覚えておけば問題ないです。
単位 | 特長 |
番手 | 数字が大きいほど糸が細い |
デニール | 数字が大きいほど糸が太い |
ここからは、BYWEARで展開しているということもあり、綿番手 (Tシャツ素材) にフォーカスして話をしていきます。
上記でも述べたように、正確に言うと糸番手は重さを表す単位ですが、一般的にアパレル業界では『糸番手=糸の太さ』の単位という認識のもとに、太い糸のことを『太番手』、細い糸のことを『細番手』と呼んでいます。
一般的には1〜20番手の糸が太番手、20〜50番手が普通、50番手以上が細番手に部類されます。デニム生地が基本的に10番の糸で織られているので、何となく生地の厚みや重さが想像できると思います。
つまり、基本的には太番手の糸で編む生地のほうが分厚くてしっかりとし、細番手で編む生地は薄くてしなやかになります。もちろん編み方 (甘く編む or 度詰めで編む) で生地の硬さや重さは変わってきますので、一概に『太番手の糸で編んだ生地=ヘビーウエイト』とは言えませんが、同じ条件で編んだ場合は太番手の方が重くてしっかりとします。
番手の表記
番手の表記の仕方ですが、20番の糸を使った天竺生地の場合『20/- 天竺』と書きます。『20』が番手で『-』が単糸という意味になります。読み方は『にまるたんてんじく』となります。
ちなみに、糸には『単糸 (たんし)』だけでなく、2本の糸を撚って1本の糸にした『双糸 (そうし)』、さらには3本の糸を撚って1本の糸にした『三子糸 (みこいと)』、さらに『四子糸 (よっこいと)』など様々な種類があります。
例えば糸が60番手の場合、表記はそれぞれ、単糸が『60/- (ろくまるたん)』、双糸が『60/2 (ろくそう)』、三子糸が『60/3 (ろくまるみこ)』、四子糸が『60/4 (ろくまるよっこ)』となります。
それ以外にも、糸にはコーマ糸や空紡糸、カード糸など様々な種類があるので、こちらは別の機会に記事にします。
BYWEARでは、14番手の太番手の糸で編み上げた『14/-BD 度詰め丸胴天竺』を使用したレギュラーTシャツ、さらに極太の10番手の糸で仕上げた『10/- BD マックウエイト天竺』を使用したボクシーTシャツをラインアップしています。
上記で述べたように、10番の糸はデニムと同じです。それくらいヘビーウエイトで上質な生地となっていますので、是非チェックしてみてください!