皆さんは『ラグジュアリーブランド』や『ハイブランド』と聞いて、どのブランドをイメージしますか?
CHANEL - シャネル
LOUIS VUITTON - ルイ・ヴィトン
Dior - ディオール
Saint Laurent - サン・ローラン
PRADA - プラダ
CELINE - セリーヌ
BALENCIAGA - バレンシアガ
HERMES - エルメス
など、数え切れないほどのブランドがあります。
その他にも、リカルド・ティッシをクリエイティブ・ディレクターに迎えてリブランディングし、見事に生まれ変わった『BURBERRY (バーバリー)』、日本では川久保玲が手掛ける『COMME des GARCONS (コム・デ・ギャルソン)』などもラグジュアリーブランドに属しています。
また、ここ数年でストリートラグジュアリーというカテゴリもでき、代表的なブランドを挙げると、Virgil Abloh (ヴァージル・アブロー) が手掛ける『OFF-WHITE™ (オフホワイト™)』、Jerry Lorenzo (ジェリー・ロレンゾ) が手掛ける『Fear of God (フィア・オブ・ゴッド)』、さらには『Palm Angels (パーム・エンジェルス)』、『Vetements (ヴェトモン)』などがあります。
これらストリートラグジュアリーと呼ばれるブランドも、ラグジュアリーブランドほどではないですが非常に価格が高いです。
なぜ高いのか?
Luxury (ラグジュアリー) = 高級、という意味の通り、ラグジュアリーブランドと呼ばれる高級ブランドの価格は非常に高いです。Tシャツ 5万円、フーディ 8万円、ジャケットやバッグになると20万円オーバーは当たり前です。
それでは、なぜラグジュアリーブランドは高いのか?という疑問を多角的に解説していきます。
1. ネームバリュー
まずはネームバリューです。
上記で挙げたラグジュアリーブランドは長い歴史があり、何十年以上もの間、ブランド価値を保ってきました。最近ではアウトレットに出店しているブランドも多いですが、ラグジュアリーブランドの多くは顧客満足度をより高めるために基本的にセールはおこなっていません。これは徹底した『ブランディング』です。いつ買っても同じ価格、これは顧客にとっては非常に安心できます。
ブランドの歴史や徹底したブランディングがネームバリューとなって価格に反映されている、ということです。
2. 開発費
2つ目は開発費です。こちらに関しては、私も大好きなファッションバイヤーのMBさんがYouTubeで詳しく解説しているので、まずはそちらを見てください。
MBさんも仰っているように、ラグジュアリーブランドは『開発=企画』に時間をかけています。洋服の歴史を徹底的に研究して、それを現代風にアレンジして商品開発をしています。
さらに付け加えると、世界中のファッショントレンドはラグジュアリーブランドが作っています。シーズンの半年前にラグジュアリーブランドがコレクションを開き、そのコレクションを見て世界中のマスブランドが次シーズンのトレンドを見極めて商品企画をしています。シーズンの半年前にコレクションを開くということは、そのコレクションの企画はシーズンの1年以上前から始動しているということになります。
このことから、ラグジュアリーブランドが1年以上先を見据えた開発をしているかが分かると思います。この開発にかかっている時間が、商品価格に反映されていることになります。
3. 原価率
3つ目は原価率です。原価とは、生地や付属費用、縫製賃、加工賃などの商品にかかるコストのことを指します。例えば、原価2,000円のものを8,000円で販売した場合、原価率は25%になり粗利率が75%となります。
おそらく多くの方が『原価率が高いほうが品質が良いに決まってる』と思うかもしれませんが、一概にそうとは言えません。例えば、同じ材料で同じ縫製工場で作った場合、100枚で発注するのと1万枚で発注するのでは原価が大きく変わるからです。 ですので同じ商品を作った場合でも原価率は変わってくるのです。
本題のラグジュアリーブランドの原価率ですが、Google検索で『ラグジュアリーブランドの原価率』と調べたら様々なサイトで各ブランドごとの原価率が出ています。ただ、これらのサイトで記載されている原価率はエビデンスがなく信憑性がほとんどないので、参考程度にして基本的には信じないほうが良いです。エルメスのバーキンの原価率が一桁という話も一時噂になっていましたが、エルメスに関しては、原料のレザーから縫製まで全て自社工場で完結させているので、言ってみれば原価率はいくらでも調整できてしまうのです。
とは言え、ラグジュアリーブランドの販売価格と原価率は密接な関係があるのは確かです。上記のサイトに記載されている原価率はあてにはならないですが、私の経験の中で信憑性のある話を2つします。
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1つ目の話。私のほうが10年以上、大手アパレル企業でチーフデザイナーをしていたのですが、その時にとある生地メーカーからプラダが使用しているツイル生地 (トレンチコート等で使う素材) を提案されました。プラダも使用しているということもありクオリティも高く、この生地でコートを作ることにしました。詳細は下記の通りです。
生地価格: @900/m (1m 900円)
販売価格: ¥19,800
原価率: 約30%
対してプラダが同じ生地で作ったコートの販売価格は約20万円です。いくらイタリアで縫製したとは言え『原価率、完全一桁じゃん...』と当時思いました。ただ、ひとつだけプラダの肩を持つと、その生地メーカーが、私がいたブランドにはメーター900円で売ってくれたのですが、プラダには1,400円で売ったみたいです。とは言え... ですが。
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2つ目の話。私も大好きなデザイナーの1人で、ディオール・オムやサン・ローランで大きな結果を出し、現在はセリーヌのクリエイティブ・ディレクターをしている『エディ・スリマン』が、サン・ローランのディレクターをしていた時の話です。ご存知の方も多いと思いますが、エディ・スリマンは無類のデニム好きで、エディが手掛けるデニムアイテムは全て日本で作っています。木村拓哉さんが着用して話題となったディオール・オムの3Dヒゲのジーンズも日本で作っていました。実は、私がいたブランドも同じ工場を使っていました。私の方がその工場の社長と仲が良く、ディオール・オムやサン・ローランの情報は全て耳に入ってきていました笑。プラダ同様に、私がいたブランドのジーンズの詳細と比較して分かりやすく説明します。
生地価格: @700/m
販売価格: ¥17,800
原価率: 約33%
対してサン・ローランのジーンズの販売価格は8万円以上。さすがにサン・ローランは、メーター700円の安いデニムではなく、1,000円以上のものを使っていましたが、縫製賃と加工賃は一緒です。ということは... ですね。無論、プラダの生地メーカーと一緒で、多少は工場側もふっかけてはいますが、基本はこのような原価率になっています。
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あと、私の経験上、Tシャツやフーディ等のスウェットアイテム、そしてスキンケアやメイクアップ商品に関しても大半のラグジュアリーブランドが原価率一桁台で販売しています。
ただ、すべてがそうではありません。エルメスのバーキンの話もしましたが、ラグジュアリーブランドのレザーバッグは本当に細部までこだわっており、とてもじゃないですが原価率一桁台では作れません。日本のバッグ職人がラグジュアリーブランドの20万円のバッグを分解して徹底的に調べてみたらしいですが、レザーのクオリティ、縫製仕様、技術、どれをとっても最高クラスで、日本ではこの価格では作れないと断言していました。
4. その他費用
今まで1〜3まで説明してきましたが、すべてがこの4に集約されると思っています。これを読めば『なぜ原価率一桁台でやっているのか?』ということも紐解けます。
その他費用と書いてますが、販売管理費 (販管費) のことです。
原価率の説明で話しましたが、
【販売価格 - 原価 = 粗利益】
という式が成り立ちます。その粗利益から販管費を引いたものが営業利益となります。そう、ラグジュアリーブランドは他の一般的なブランドに比べて、この販管費が非常に高くなっています。
ネームバリューでお話した『顧客満足度』を高めるための費用も販管費になります。ラグジュアリーブランドのショップに行ったことがある人なら分かると思いますが、ラグジュアリーブランドのショップは、内装や外装、什器などすべての点においてトップクラスでこだわっています。そして、販売員の丁寧な対応もそうです。ラグジュアリーブランドの店長は年収1,000万円を超えることもザラです。これらのテナント費用や外装内装費、光熱費、販売スタッフの人件費、すべてが販管費になります。ここにコストを掛けているからこそ、ラグジュアリーブランドで買い物した後は気持ちよく帰れるのです。
開発費に関しても研究費だけでなく『人件費』がかかります。冒頭で挙げた多くのブランドが、有名なクリエイティブ・ディレクターを起用しています。ルイ・ヴィトンのヴァージル・アブロー、セリーヌのエディ・スリマン、バーバリーのリカルド・ティッシ、ディオールのキム・ジョーンズ、バレンシアガのデムナ・ヴァザリア、プラダのラフ・シモンズ等、これらのディレクター費用だけでも年間数千万円〜億はかかります。それに加え、モノづくりには様々なスタッフがかかわっています。もちろん、それ以外にもサンプル (試作品) 費用などの経費もかかります。
上記だけでも非常に多くの販管費を使っているのが分かると思いますが、ラグジュアリーブランドはその他にも多くの販管費を惜しみなく使っています。代表的なのがコレクションです。ミラノコレクションやパリコレクション、ニューヨークコレクション等でランウェイを行うだけでも数千万円以上かかる上にトップモデルを起用したり、世界各国のセレブリティをショーに招待してます。その分費用も膨らんでいきます。
さらにラグジュアリーブランドはプロモーションにも多くの費用をかけています。雑誌の見開き広告、ビルボード広告、デジタル (SNS) 広告など多くのプロモーションやタイアップをおこなっていきます。雑誌の見開き広告だけでも数百万かかる上に、トップモデルを起用しているのでさらにコストがかかっています。
まとめ
上記のように、ラグジュアリーブランドは原価率は低くても、その他の部分で他のブランドよりも多くの費用をかけているので販売価格が高くなっている、ということになります。営業利益ベースで考えているからこそ、原価率は低く見えてしまうのです。
商品開発から商品を直接お客さまに売るまでのすべての工程において、一貫したブランディングで妥協していないからこそ、それらが顧客満足度につながって、やがてそれがネームバリューになっていくのです。
要は、品質だけではなく『体験』も価格に含まれているということです。
今回も長くなりましたが、BYWÉARは『ラグジュアリーな体験をより身近に』をブランドコンセプトに掲げているように、ラグジュアリーブランド同等またはそれ以上の生地・縫製クオリティのアイテムを展開しています。
ラグジュアリーブランドのようなラグジュアリーな空間で丁寧な接客、といった極上の購入体験は出来ませんが、オンライン上でできる最大限の購入体験と、着た時に感じることのできる最高の体験 (高揚感) を約束いたします。
是非そのクオリティを体験してみてください。
なぜラグジュアリーブランドと同等のクオリティで、ストリートブランドの価格帯で展開できるのか?という疑問は、D2Cというビジネスモデルが関係しています。D2Cについては後日記事で詳しく説明します。